G05明治時代の評判記

『俳優評判記』第二編
English Commentary
評者:六二連 版型:半紙半裁横本
出版:明治12年(1879)12月
資料番号:shiBK03-0138 所蔵:白樺文庫.

【解説】
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 ほとんど毎年欠かさず出版されていた八文字屋系列の役者評判記も、幕末に消滅する。その後、明治11年(1878)までの間に、版元も評者も異なる単発での「役者評判記」が東京、大坂、京都、金沢などで出版されている。その後、明治11年(1878)11月から明治19年(1886)2月まで、27号続いたのが、六二連の「俳優評判記」である。そのタイトルの「俳優」の読み方は「やくしゃ」であり、ときどき「はいゆう」とルビが振られており、両方の読みが通用していたらしいが、江戸期からの役者評判記を継承する意識があったのは、黒表紙・横本和綴の体裁や、役者目録を掲載し、位付けと見立てによる寸評を記す編集方針からもわかる。
 六二連とは、前から二枡目、上手から六枡目の最も観やすい枡席に陣取った旦那衆の観劇グループのことで、俗に団十郎ジジイと呼ばれた能書家の梅素玄魚やその門下である高須高燕らである。明治12年から発刊される雑誌形式の「歌舞伎新報」と時代が被るが、「歌舞伎新報」が三木竹二や饗庭篁村らの新聞劇評型であるのに対して、「俳優評判記」は、江戸の役者評判記との間にたつ過渡期に位置づけられ、見巧者たちによる「評判」で記述されたことに特徴がある。(塩.)