G03役者を褒める「評判記」

『役者紫郎鼠』
判型:半紙半裁横本 3巻3冊
出版:安永9年(1780)1月京都
資料番号:arcBK04-0202 所蔵:立命館ARC.

【解説】
 役者評判記は歌舞伎役者の技芸に対する評やそれにもとづく位付けを主たる内容とする出版物である。十七世紀半ばに登場し(「野郎虫」)、元禄13年(1700)、京都の版元八文字屋が出した黒表紙の『役者口三味線』3巻3冊本を以っては基本的な様式が固まる。3巻をそれぞれ、京都、江戸、大坂にあて、各都市の役者の一覧(目録)と短編小説風の序文(開口)のあと、役柄・役者別に位付けを行い、その順に配列する。位付けは「中ノ上」「上」から、「上上吉」「極上上吉」などと示され、後には、「上」や「吉」の字画の有無、また字画の黒線か白抜といったきめ細かな、評価を可能としている。そして、評文では、演技を褒め、励ましていく。以降、幕末までほぼ毎年刊行され、さらに明治期に入ってもそれを踏襲したものが出ている。
 評文の内容には、役者の経歴・技芸・人気などを示すとともに、演技・演出の実態を記述も豊富に含まれ、台本がほとんど伝存しない歌舞伎という芸能に対して、歴史的な内容を知る有効な手がかりとなる。(塩.)