C1-2 雷神の子、金太郎.

『金時一代記』

編著者:未詳 判型:中本 5巻5冊の内第4冊
出版:明和4年(1767)
所蔵:立命館ARC  所蔵番号:hayBK03-0285-04.

【解説】
 金太郎は人並み外れた力を持っていた。熊と相撲を取る姿は有名であるが、雷を懲らしめる話もある。この作品『金時一代記』では幼名怪童丸で登場している。怪童丸が気持ちよく遊んでいた時に、空から雨が降り出し、雷まで鳴り始めた。それに腹を立てた怪童丸は雷をにらみ落とし、木にしばりつけた。雷は「かみなりの成敗ももうならぬ。かなしやかなしや。そのたいこは稲光のときにたたきます。お慈悲にお返しなされてくださりまし。」と、怪童丸に対してかなり弱気な発言をしている。雷神に強い金太郎像が描かれており、ほかの文献にもしばしば登場することから雷神に強い金太郎像が定着していたことが読み取れる。
 『前太平記』では山中に住む老女が赤竜と通ずと夢にみてみごもったときには雷鳴がしきりに鳴り渡ったという話がある。竜は雷神であるという民間信仰の関わりもあり、金太郎は雷神の子であるという伝承は広まった。金太郎は生まれたときから神をも脅かすほどの力を持っており、その力があったからこそ異界の地に存在する敵を討伐することができたのである。(宮).