E1-4 人間化する天狗.

『能楽図絵』「大会」

絵師:月岡耕魚 判型:大判錦絵
出版:明治30年(1897)
所蔵:立命館ARC  所蔵番号:arcUP0936.

【解説】
 本作は能「大会」の一場面を描いたものである。この「大会」に登場する天狗も、いわば人間味に溢れた描写で描かれている。木の上でうっかり居眠りをした烏天狗は、子供たちに捕まりさんざんな目にあっているところを通りかかった老僧に救われる。夜その老僧を訪ねてきた天狗は、一つ願いを叶えてくれるというので、老僧は、お釈迦様が霊鷲山で説法(大会)をする姿を見せて欲しいと頼む。そこで、老僧にはけっして信心を起こしてはいけないと念を押して、天狗が釈迦の姿となって説法を見せる。思わずも僧は一心に礼拝してしまったため、仏法の守護神である帝釈天が天から下り、罰として天狗を懲らしめる。
 「大会」では人間側に恩返しをするため、ましてや喜ばせるために天狗が異境の能力を行使するわけである。(近a).