E1-3 降下する天狗像.

『滑稽都名所』「鞍馬山」

絵師:歌川芳梅 判型:中判錦絵
出版:安政年間(1854~1859)頃
所蔵:立命館ARC  所蔵番号:arcUP3433.

【解説】
 「滑稽都名所」は、上方絵の名所絵シリーズとしては早いもので、「都百景」に先行する。諧謔味を画中に入れているところに特徴があり、本作では、鞍馬寺を目指す旅人たちと、それと並行して鞍馬山の住家に戻ろうとしている烏天狗が描かれている。そして、旅人たちも指さしている先の天狗は、大きな酒瓶を持ち空を飛ぶが、重さのせいか低空飛行であって、より俗世的で親しみやすい姿となって描写されている。
 本来は、人に危害を加えたり、人さらいをする恐れられる存在であった天狗も、近世期、とりわけ幕末期には、このような愛すべき身近な存在として認識されるまで、イメージを変化させていったのである。(近a).