D2-3 歌舞伎の渡辺綱.

「契情大江山」

絵師:中井芳滝 判型:中判錦絵
上演:慶応3年(1867)2月 角の芝居
所蔵:舞鶴市糸井文庫  所蔵番号:01ル58.

【解説】
 慶応3年2月大阪角の芝居で上演された『けいせい大江山』の羅生門の場である。渡辺綱に三枡大五郎、茨木童子に尾上多見蔵という配役で、この場面において綱は金札を持ち、綱が羅城門に行った証として金札を置いてくるという、謡曲『羅生門』の要素が取り入れられていることが分かる。
 酒呑童子伝説は、歌舞伎でもよく上演される演目であったが、人気があり、内容が固定化していったため、酒呑童子退治そのものよりもその周辺の伝説である頼光四天王や保昌の活躍などが多く描かれるようになった。『けいせい大江山』では、大江山の酒呑童子退治伝説とともに、謡曲『羅生門』の綱と鬼との闘いだけでなく、鬼同丸が頼光を市原野で牛の皮をかぶって待ち伏せし殺そうとする「市原野のだんまり」や坂田金時が活躍する足柄山の山姥伝説なども描かれている。歌舞伎においては、酒呑童子退治よりもその周辺の伝説である頼光四天王や保昌などが人気を集めたようだ。(豊).