C2-1 金太郎から坂田公時へ.

『源頼光於足柄山公時得給体』

絵師:未詳 判型:大々判墨摺絵
出版:文政頃(1818~1830)
所蔵:立命館ARC  所蔵番号:arcSP02-0378.

【解説】
 頼光に力を褒められた金太郎は臣下として「坂田公時」と名付けられ召し抱えられる。頼光により元服をし、頼光たちとともに山を下りる。いわば境界の外である山中で怪童として存在していた金太郎が、境界を超えて頼光たちの人間側に存在するようになった。人ならざるものの力は、異界の怪物たちを倒す存在に必要な力へと変化したのである。元服を終え男の子から成人男性へ、恐れられる異形の力から英雄の力へと変じた。
 しかし金太郎の母は金太郎が「坂田公時」へと名前を変えて自分の元から離れて人の世界へ進んでいく姿を見送り、喜び山中に飛び去り、当時の都の人にとっての異界に住む存在として残った。
 本図は、仙台の山車祭の山車のビラ絵である。元服を終え甲冑を着て、子供としての金太郎ではなく頼光の臣下のうちの一人の男として山から出る瞬間を造形した山車を写したもの。(宮).