5.2.VR展示で取り上げる場面

絵師:豊国〈3〉
判型:大判/錦絵
上演:嘉永04(1851)年5月1日 江戸・河原崎座
外題:東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
配役:伊右衛門女房お岩 〈4〉尾上 梅幸 あんま宅悦 〈4〉浅尾 奥山
資料番号:006-0266 所蔵:早稲田大学演劇博物館

VR展示の舞台

今回のVR展示では、第二幕「雑司ヶ谷四ツ谷町の場」を取り上げる。それは、『東海道四谷怪談』という作品が、単なる仕掛け怪談芝居に収まらない面白さを持つことを強調するためである。二幕目は、貧困のために傘張を行う伊右衛門から始まり、病んだお岩と、粗雑な家という、浪人の生活の苦しさが描かれている。そして、対比的に伊藤喜兵衛宅は豪華な家づくりで、裕福な暮らしをしていることが描かれる。出世と金に目が眩み、一度は婚姻を断った伊右衛門が、孫娘との婚姻を承諾してしまうのは、河竹繁俊の言う「あくまでも生に執着し、あくまでも悪に生きようとする伊右衛門は、実は意思の弱い男であり、境遇の力に引きずられていく人間である」を象徴するような場面である。その伊右衛門に冷たくあしらわれ、結婚の理由であった敵討ちの約束までも反故にされ、富める者の手により、醜く容姿の変わってしまったお岩は、恨みを抱き自死するのである。このように、第二幕は生活の貧困、登場人物の人間味がありありと描かれた場面である。そのため、『東海道四谷怪談』の写実的な人物間の情動の面を見せるためには、第二幕を取り上げることが適していると考えられる。 

参考文献

河竹繁俊「解説」『東海道四谷怪談』、岩波書店、1956年8月、344p

(本田)

関連記事

arrow_upward