3.1.2.2.近代の劇場前

撮影:昭和31年(1956)12月1日 
場所:京都・南座
資料番号:F02-52-123 所蔵:立命館ARC。

 昭和4年(1929)に新築落成した南座は、桃山風の意匠を取り入れた壮麗な近代劇場として整備され、以後、京阪を代表する歌舞伎劇場として親しまれた。本写真は、その南座正面の様子を写したものであり、近代化された劇場建築の中にも、江戸時代以来の歌舞伎の宣伝空間が色濃く継承されていることがわかる。
 建物には電灯や近代的な外装が一部見られる一方、劇場正面には役者名を書き連ねた「まねき看板」が掲げられ、入口上部には演目場面を描いた絵看板が並ぶ。まねき看板は、江戸時代の劇場前を文字や絵で飾った宣伝方法に由来するもので、顔見世興行では役者名を勘亭流で大書し、看板上部を役者の紋で飾る。さらに劇場入口中央には、「口上まねき」も掲げられている。これらは出演役者や興行内容を知らせるだけでなく、その年の顔見世の華やかさや格式を象徴する視覚メディアでもあった。
 このように、劇場前には多様な宣伝媒体が重層的に配置され、劇場建築そのものが巨大な広告塔として機能していた。こうした景観は、江戸時代の芝居町に見られる劇場前の構成を受け継ぐものであり、現在の南座や歌舞伎座にも継承されている。(戸塚)

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