3.3.1.3.歌川派の役者絵

絵師:国貞〈1〉
判型:大判/錦絵
上演:天保2年(1831) 8月 江戸・市村座
外題:東海道四谷怪談  (とうかいどうよつやかいだん) 
配役:民谷伊右衛門 〈2〉関 三十郎
資料番号:arcUP4996 所蔵:立命館ARC

 勝川派に続いて19世紀前半の役者絵界を牽引したのが、歌川豊春を祖とする歌川派である。歌川派は、豊国、国芳、広重らを輩出し、役者絵、美人画、武者絵、風景画など幅広い分野で活躍した。その中でも初代歌川豊国は、歌川派の役者絵を代表する存在である。豊国は勝川派の似顔表現を受け継ぎながら、役者の姿をより華やかで洗練された理想像として描き出し、19世紀初頭には勝川派をしのぐ人気を獲得した。

 歌川派の役者絵では、大判錦絵の広い画面を活かした表現が発展した。大判は一般に縦36〜39cm、横27〜29cmほどの判型で、細判に比べて画面が大きく、役者の姿だけでなく衣装や背景、小道具なども豊かに描くことができた。そのため役者絵は、単に役者の顔や姿を伝えるだけでなく、演目の雰囲気や舞台上の名場面を表現するメディアへと発展していった。

 本作は、歌川国貞による大判錦絵で、『東海道四谷怪談』の主人公・民谷伊右衛門を描いている。国貞は歌川派を代表する絵師の一人であり、役者の似顔と華やかな舞台表現を巧みに融合させた。画面には伊右衛門の姿が大きく描かれ、背景や小道具によって物語世界が効果的に表現されている。役者の魅力を伝えると同時に、芝居の印象的な場面や作品の世界観を観客に想起させる点に、歌川派の大判役者絵の特徴を見ることができる。

 歌川派ではさらに、横長の構図や三枚続など多様な形式が試みられた。後には国貞によって、大錦三枚続の画面全体に一人の役者の半身像を大きく描く大胆な構図も生み出され、役者絵は一層迫力あるものへと発展していった。(宮﨑・戸塚)

arrow_upward