3.3.1.2.勝川派の役者絵

絵師:春章〈1〉
判型:細判/錦絵
上演:安永2年(1773) 3月 江戸・市村座
外題:江戸春名所曽我  (えどのはるめいしょそが)
配役:藤左衛門尉祐経 〈1〉尾上 菊五郎、 足軽新平〈3〉大谷 広次
資料番号:arcUY0260~61 所蔵:立命館ARC

  鳥居派に代わって18世紀後半の役者絵界を牽引したのが、勝川春章を祖とする勝川派である。勝川派は写実的な似顔描写を特徴とし、役者の身体表現や歌舞伎の演技・演出を忠実に描き出す手法を確立した。それまでの役者絵は、鳥居派による様式化された表現が主流であり、役者名や紋などの情報がなければ誰を描いたものか判別しにくかった。これに対し春章らは、役者一人ひとりの顔立ちや特徴を描き分け、絵を見るだけで誰であるか分かる「似顔絵」を完成させた。

 本作は、勝川春章による細判の錦絵である。鳥居派の時代には手彩色や限られた色数による版画が主流であったが、春章が活躍を始める明和期には多色摺木版画である錦絵が誕生し、役者の姿を鮮やかな色彩で表現できるようになった。こうした似顔表現と華麗な色彩の組み合わせは、贔屓の役者を身近に感じたい観客の心をつかみ、役者絵を鑑賞用の商品として大きく発展させた。

 また、勝川派は細判を複数枚つなげて一つの画面を構成する「続き絵」を多く制作した。続き絵によって画面が広がることで、役者同士のやり取りや舞台装置を含む舞台空間全体を描くことが可能となり、歌舞伎の舞台をより臨場感豊かに再現できるようになった。一方で、観客は贔屓の役者が描かれた一枚のみを選んで購入することもできた。

 春章は似顔絵をはじめ、大首絵や役者の日常姿を描く作品など、贔屓客に喜ばれるさまざまな表現を生み出した。多才な春章の門下からは春好、春英、春朗(後の葛飾北斎)らが輩出され、その影響は後の浮世絵界へと広く受け継がれていった。(宮﨑・戸塚)

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