G1 豊国漫画の弁天小僧.

作品名:「豊国漫画図絵」「弁天小僧菊之介」
出版:万延元年(1860) 江戸 魚屋栄吉
絵師:歌川豊国〈3〉
判型:大判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUP4247).
 
弁天小僧の初演は文久2年(1862)3月、市村座である。しかしこの絵が描かれたのは万延元年(1860)である。にもかかわらず、弁天小僧の姿に酷似している。本作品は弁天小僧という作品の誕生にかかわる重要な作品である。本作品は3代目豊国が安政1859年から翌年にかけて制作した全29図からなる画集の中の1作品であり、弁天小僧に扮しているのは3代目岩井粂三郎である。しかし、29図のうち、この弁天小僧のみが何の作品をモデルにしているのかは不明である。5代目尾上菊五郎の自伝によると、彼はこの絵に惹きつけられ、粂三郎の顔を自分の顔だと勘違いして、のちにこの狂言の作者となる河竹黙阿弥(1816~1893)に狂言作品の製作を依頼したという。その後、弁天小僧は超がつくほどの人気作品になることとなるが、間違いなくその礎となった作品と言ってよいだろう。(住宮)