深読み役者絵展
ごあいさつ

 立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)は、昨年10月、文部科学省により日本で第7番目の「国際共同利用共同研究拠点」として認定を受けました。今後も、日本を代表するデジタル・ヒューマニティーズ(情報人文学)の研究拠点として、国際的な研究展開を期待されるのと同時に、浮世絵のような日本を代表する文化資源の魅力を国内外に発信するという大きな役割を担うことになります。ARCの代表的な研究活動に、海外の日本文化資源デジタルアーカイブがあります。浮世絵はその中核をなす代表的な分野であり、ARCの浮世絵ポータルデータベースでは、一般公開分で約16万件、研究利用分も合せれば、50万件を超える作品が登録されています。
 一方で、ARCは、原物資料の収集にも力を入れています。浮世絵に関しては、現在、9,500枚を越える作品を収蔵しており、日本で有数の浮世絵所蔵機関として成長しました。今回、その中から歌舞伎を題材にした役者絵というジャンルの作品を選んで展覧会を企画し、みなさまに御覧にいただきます。
 役者絵は、役者のブロマイドであり、上演に合わせて膨大な数が出版され、大変人気のあるものでしたが、時間を経た今、役者は、似顔で描かれているにもかかわらず、ほとんど忘れ去られてしまいました。また歌舞伎そのものも、現代人からは敷居の高い演劇になってしまったため、演目の内容を理解している人々は限られています。しかし、最近は海外でも歌舞伎の解説書が続けて出版されており、役者絵にも注目が集まり始めています。
 こうした状況を鑑み、この展覧会では歌舞伎の中でも特に著名な作品8点を選び、"少し深く" 役者絵を鑑賞してみます。作品は、人形浄瑠璃を原作とする「菅原」「千本桜」「忠臣蔵」の三大名作、市川団十郎家の代表演目である歌舞伎十八番から「助六」「勧進帳」、四世鶴屋南北の名作「四谷怪談」、河竹黙阿弥の代表作「弁天小僧」、歌舞伎舞踊の代表作「娘道成寺」で、これらは現代でも頻繁に上演され、内容をご存知の方も多いと思います。今回、それぞれの作品に、少し深読みした解説を付けてみましたが、ご来場のみなさまもそれぞれの作品の深読みに挑戦してみてください。

2020年正月 主催者