G2 娘姿の弁天.

作品名:「南郷力丸 中村芝翫」「番頭与九郎 片岡十蔵」「弁天小僧菊之助 市村羽左衛門」
上演:文久2年(1862) 3月 江戸・市村「青砥稿花紅彩画」
絵師:歌川豊国〈3〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP1707~1709).

「青砥稿花紅彩画」の一番の見せ場、浜松屋の場面を描いたもの。弁天小僧が窃盗の疑いをかけられ、浜松屋の番頭与九郎に腕をつかまれている。右手には日本駄右衛門と浜松屋幸兵衛が描かれている。
弁天小僧はこの後の場面で正体がばれて有名な口上がはじまるわけであるが、まだ武家の娘を演じており、与九郎に腕をつかまれてうろたえるその姿や仕草は男の要素は一切感じられない。G3の国貞の作品と比較してみてもよくわかるだろう。
また、幸兵衛も国貞と比べてみると2つの作品では随分と異なる描かれ方をしていることがわかる。本作品では番頭である与九郎が中心で描かれ、幸兵衛は浜松屋の店主であるにも関わらず、驚いた仕草なのだろうか、どこか滑稽な姿で描かれている。一方国貞の絵は与九郎は描かれず、幸兵衛は逆に絵の中心となるほど大きく描かれている。同じ浜松屋のシーンであっても描く人物、背景などの要素が違えば全く別の作品として鑑賞することが
できるだろう(住宮)