E2 真向きの弁慶.

作品名:「富樫左衛門 片岡我童」「武蔵坊弁慶 市川団十郎」「源義経 中村福助」
出版:明治17年(1884) 5月 小宮山昇平
絵師:豊原国周
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arc6017~6019).
弁慶、富樫、義経のそれぞれの見得がきまっている作品。弁慶は勧進帳の読み上げが終わると正面に向き直って数珠と巻物で不動明王の形にきまる。富樫はその後の呼び止めの場面で刀に手をかけ、長袴を蹴出すこのかたちできまり、意気込む。義経の笠に手をかけているかたちも読み上げの際の見得である。微妙に異なる場面の三人の見得を描いた本作品は鬼気迫る表情の弁慶を中心に、疑いの視線を向ける富樫と真剣な中にどこか心配そうな常陸房と亀井、弁慶を信頼しているのか柔和にも見える義経、それぞれの人物の表情が楽しい作品である。なお、本作品も上演の記録が存在しないことから見立て絵であると考えてみてよいだろう。(住宮)