H3 三代目三津五郎の道成寺.

作品名:「坂東三津五郎」「市川団十郎」「尾上菊五郎」
上演:文化13年(1816) 3月 江戸・中村「梅桜松双紙
絵師:歌川豊国〈1〉ヵ
判型:大判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUY0298).

問答などを経た、中啓の舞を描いた作品。白拍子の舞踊が中心の作品であるため、所化が白拍子の前に座っていることはない。大判の一枚に三人を収めるための描き方と考えられる。袂が大きく動いた部分を描くことで、中啓の舞の躍動感を表現している。

坂東三津五郎は3代目のことであり元は立役の名手であった。一方で3代目中村歌右衛門とともに変化舞踊の隆盛を作り、舞踊坂東流の基礎を築いた。
立役の役者が白拍子を演じることは他にもあった。踊りの名手であった中村仲蔵は天明3年(1783)8月に市村座で、天竺徳兵衛という人物が妖術を用いて女に化け道成寺に来るという「東鹿子娘道成寺」を行っている。これでの型が立役の演じる白拍子の一つとなった。

立役でありながら女方の白拍子を演じたことに、その舞踊の上手なことが窺える。(堀)