C2 初代中村仲蔵.

作品名:(斧定九郎 中山小十郎)
上演:天明6年(1786)5月 江戸・中村「仮名手本忠臣蔵
絵師:勝川春章〈1〉
判型:細判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUP6968).

現在上演される時の定九郎は黒装束に身を包んだ浪人としての姿だが、この姿を定着させたのは初代中村仲蔵である。それまでの定九郎は端役で、服装は大時代的な山賊の扮装で演じられていた。それを仲蔵が全身は白塗りで服装は黒紋付、月代の伸びた髪に大小の朱鞘、素足に破れ傘、そして尻端折という格好に変えた。明和3年(1766)9月9日の市村座であった。

この定九郎の姿は実際に定九郎が見かけた人物だという伝説がある。その真偽はともかくとして、仲蔵の演出した定九郎は当時の浪人の姿を写実的に描いたものと考えられる。より現実に即した定九郎となったのである。この定九郎に批判もあったが浸透していき、今日でも演じられる姿となった。

この絵は初演から20年経った天明6年に描かれた。鞘が黒いように見えるがこれは変色で黒くなってしまっただけで、元々は朱鞘であったと考えられる。20年間変わらない姿であることから、この演出が人気であったことがうかがえる。(堀)