D1 助六の出端.

作品名:「家櫻廓掛額」
上演:明治3年(1870) 3月 東京・守田「家櫻廓掛額」
絵師:未詳
判型:大判錦絵 2枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP5283~5284).

5代目尾上菊五郎が演じる助六。『樟紀流花見幕張』の二番目大切として上演された。描かれている場面は助六が登場する場面である。傘を半分すぼめ揚幕から数歩進み、中腰に極まる。出端の台詞の途中で傘をすぼめたり開いたりの演出がある。その際の長台詞を浮世絵の背景に登場の場面を描いた作品である。

作品中に『岸沢式佐 尾上菊五郎 相勤申候』の文字が読み取れることから、岸沢流の出端の唄を用いていることがわかる。この唄は作詞を河竹黙阿弥、作曲を6世岸沢式佐がつとめた。岸沢式佐は常盤津の三味線奏者であるが、助六を尾上菊五郎がつとめる際は清元節であるはずなので、その点合点がいかない。ここでは、尾上菊五郎演じる助六であるが、外題も異なるため別物として捉えられているのだろうか。

また絵の構図として、上に描かれている花は題から推測し桜であると考えられる。あわせて、出端の唄が描かれている背景は台本を模して本のように描かれている。この構図に似た作品として、文久2年に歌川国貞が描いた「河原崎権十郎 助六由縁江戸櫻 相つとめ申候」があげられる。国貞が描いたこの作品は、今回取り上げている「家櫻廓掛額」以前に描かれていることから、国貞の作品を模して描いたと考えられる。(山)