D2 助六の雨.

作品名:(助六〈6〉市川団十郎)
上演:寛政11年(1799)3月 江戸・中村
「大三浦達寿・助六廓の花見時
絵師:歌川豊国〈1〉
判型:大判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUP0545).

助六は出端で蛇の目傘を差して登場する。吉原に雨が降っているわけでもなければ、時間が夜なので日傘として用いているというわけでもない。

これは一つに花の雨、桜の雨が降っているという洒落という考えがある。洒落でさす傘であるため濡れたら使い物にならない紗で作られており、濃紺の部分に役者の家紋が入っている。美しい意匠のある傘をさし役の雰囲気、演出を飾り立てる一つの要素となっている。

一方で花の雨のためではないという考えもある。単純に人目を引く、「風流」な絵を見せるところだという考えである。カブいた風俗であり、助六にもっともふさわしいとして使われるようになったのである。

どちらの考えであっても、図のように助六の形象に重要な要素であることは間違いないだろう。(堀池)