D3 助六の鉢巻.

作品名:(助六〈2〉市川八百蔵)
上演:安永5年(1776) 2月 江戸・市村「冠言葉曽我由縁」
絵師:勝川春章〈1〉
判型:大判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUP0004).

助六の紫色の鉢巻は病鉢巻(※)ではなく、額の右側に結び目がある。これは助六の力の象徴と言われてる。また、病鉢巻とは逆に鉢巻を巻くという奇抜な出立は「粋」を表現しているとも言われている。

この作品では助六の鉢巻の結び目を左奥に描いている。そのため、作品のみから読み取ると病鉢巻として受け取ることができる。また、象徴である鉢巻の結び目が人物(助六)に隠れる状態で描かれている。しかしながら、凛々しく描かれたこの鉢巻からは助六の勢いが感じられる。この作品が描かれた江戸時代に助六を描いた他の作品においては、助六の鉢巻を場面に忠実に客席から見えない場合は人物より後ろに描いている作品が大半である。しかし明治時代になると、助六の鉢巻は本来は人物より後ろにある場合でも、結び目の位置を変え、正面に描かれるようになった。このように時代に伴い、助六の象徴である鉢巻の描かれ方も変化を遂げたと考えられる。

(※)病鉢巻...歌舞伎に出てくる病人は病鉢巻を付けている。紫の鉢巻を額の左側に結べ目を作るもののこと。



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