C5 七段目の密書.

作品名:「仮名手本忠臣蔵 七段目」
出版:天保(1831〜1845) 中期 江戸・佐野屋喜兵衛
絵師:歌川国貞〈1〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP 3851〜3853).

先日の南座の顔見世(2019年11月30日(土)~12月26日(木))でも行われた忠臣蔵七段目「祇園一力茶屋」の場面。敵の目を欺くために遊行に耽る大星由良之助の元に、力弥が顔世御前からの密書を届けにくる。誰もいないところで密かに読もうとする由良助であったが、その文に興味を持ったお軽と、高師直の手先として動向を探る斧九太夫に中身を見られてしまう。

由良助が密書を読む時、今日のようにたらさず巻き取るという形もあった。その場合、お軽が落とした簪の音に驚き後ろ向きにたらした端を九太夫がちぎる、という演出であった。たらしていく方が風情があり、密書をちぎるというのも自然である。

この場面を描いた絵は密書を長くたらしているか、密書がちぎられた後のものが多い。しかしながらこの絵はたらしているというには些か短い。また三枚続揃物ということもあってか、九太夫が少し離れたところから中身を読もうと伺っている。

(堀池)