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初編
B 隠された『太閤記』
文化元年(1804)の『絵本太閤記』の絶版、および関連の錦絵の筆禍事件によって、天正以降の武者の名前を錦絵に表すことは禁じられた。しかし、新しい武者画題であった太閤記の題材は定型の図像が認知され、その後は、他の時代の題名・人物名に置き換えた錦絵が作られるようになった。ことに、歌川国芳は天保以降、多くの太閤記の絵を描いている。 これらの作品見る時は、画中の題ではなく、描かれている図像のかたちによって内容を認識しなければならない。多くの図像は『絵本太閤記』の挿絵を規範としているので、共通する図像の要素を知ることが必要である。ここでは『絵本太閤記』中、錦絵に取り上げられている主な題材と関連する錦絵を展示する。 参考文献: 木村八重子「武者絵の側面―『絵本太閤記』の投影(東京都立中央図書館『研究紀要』13号、昭和57年) 鈴木重三「国芳武者絵の太閤記的解釈」(『浮世絵八華7・国芳』平凡社、昭和60年) 岩切友里子「太閤記の世界」(『浮世絵大武者絵展』町田市立国際版画美術館、2003年)