百花譜
ひゃっかのふ
画題
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解説
東洋画題綜覧
森川許六の随筆、四季の花、梅、紅梅、桜、海棠、梨花、椿、桃、藤、山吹、長春、牡丹、芍薬、罌粟、杜若、百合、姫百合、合歓、昼顔、紫陽花、蓮、卯の花、朝顔、鶏頭、鳳仙花、女郎花、桔梗、萩、菊、寒菊、冬牡丹の三十六種につき、これを瀟洒な筆もて短評を試みたもの、『風俗文選』に載てゐる。一節を引く
「紅梅といふ花は、一度彼岸参の心を動かし、未開紅の光をはなちぬれども、やがて莟くだけ、花ひらけてより、日々におとろへ、雨風を帯、夕日にしらけて、つぼめる色を失ふ、たとへば三十過たる野郎の大躍につらなり、心ならず風流をつくりたる心地ぞする「桜は全盛の傾城なり、天晴富風に打こみたる風俗、行末明日のたくはへの一点もなき花なり「海棠は、同じく時を得たる野郎の、大夫と仰がれ、勢ひもさかむに、世の中猛とのゝしれども、質素にしてうるほひ少し、誠に香のなき一色の見たる心地こそ本意なけれ、「梨花は本妻の傍に侍る妾のごとし、よろづおもひにうちしづみ、常に人の下にたてるがごとし。
これを画いたもの、許六自身の筆になる百花譜絵巻がある。 (波多野古渓氏旧蔵)
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)