A4-5 妖婦・妲己のお百


「善悪三拾六美人」「妲己のお百」
絵師:豊原国周 判型:大判錦絵
出版:明治9年(1876)3月
所蔵:国立国会図書館  作品番号: 本別7-522.02-008.

【解説】
[善悪三拾六美人】とは豊原国周による美人画。図は徳兵衛を殺す妲己のお百を描いたもの。A4-4で取り上げたお百は妲己のお百として講談や歌舞伎に脚色されていった。 
 あらすじ
 佐竹家に乗り入れをしている廻船問屋の桑名徳蔵は大晦日の夜に一儲けしようと禁忌をおかして海に出る。すると海坊主があらわれたので徳蔵はこれを秘伝の刀で斬り捨てる。海坊主は徳蔵に恨みを抱き徳蔵の留守中に妻を殺すも帰ってきた徳蔵に退治されてしまう。時がたち徳蔵の息子の徳兵衛が家業を継ぎ、妻をもらってから数年がたったころ、奉公の娘をさがしていたころお得意先の妹にお百という別嬪がいると知り雇うこととなる。しかし、お百は奉公に出る前に先代の徳蔵が斬った海坊主に取りつかれて毒婦になってしまう。そんなことは知らずに桑名家のおかみおきよは実の妹のようにお百のことをかわいがるが、旦那の徳兵衛を奪われさらにお百の陰謀で殺されてしまう。おきよは恨みを抱き徳兵衛の蔵を火事にし、商売をできなくさせる。
しかし、お百は徳兵衛に悪知恵を授け金を借りさせ江戸まで夜逃げする。江戸についた二人は借り逃げしたお金も使い果たし困っているところを美濃家重兵衛という男に助けられる。徳兵衛は江戸でお金を貸していた人に心当たりがあり、その人物を探しに行くためにお百を重兵衛に預け旅にでる。一月後やっとお金を返してもらった徳兵衛が江戸に帰ると、お百は上方芸者になっていた。裏切られたと思った徳兵衛はお百を殺そうとするも騙されて川に突き落とされ殺されてしまう。幽霊となってあらわれた徳兵衛に対しお百は 
「お前はとんだ親切者、提灯がわりに照らしておくれか」 
 と言い放つ。この後秋田騒動に関わり二十万石を横領しようと企むが奸計を見破られ最後を迎える。(小)