A4-4 妲己のお百

「英名二十八句集」「妲己のお百」
絵師:月岡芳年 判型:大判錦絵
所蔵:浮世絵大成 作品番号:Z0173-358.
※会場展示作品は、AHコレクション。


【解説】
英名二十八衆句は無残絵の一つ。月岡芳年と落合芳機による浮世絵木版画の連作。多くは芝居から題材を得ている。
無残絵は芝居中の殺しの場面などを描いている。図のものは「妲己のお百」が主題となっている。

妲己のお百

お百は江戸中期の人物。京で生まれ祇園で遊女となりたびたび旦那や主人を替えて廻船問屋や歌舞伎役者と内通する。吉原から花魁にでているうちに揚屋の妻となるも、秋田藩の家老、那河忠左衛門の内縁の妻となる。内縁の妻として毒婦ぶりを発揮し、秋田騒動の際主人が逆意ありとみなされ斬罰となるもお百自身は女中とみなされ無罪になる。江戸に出てきたお百はその後も旦那や主人を度々替えて、一説では5人も殺したとされている。
「秋田杉直物語」などの実物録でその性格が拡大解釈されるようになり、その残虐性や淫蕩ぶりから中国、殷の紂王の妃妲己の名を冠するようになる。後に講談、歌舞伎の題材となり大幅に脚色され、江戸期を代表する毒婦としてその名を世間に知られ、恐れられた。
 また、脚色された「妲己のお百」は海坊主にとりつかれたために毒婦となったとされて、玉藻前と同じくここでも女性が男性を惑わす力と妖怪の類の力を掛け合わせて考えられていることがわかる。(小)