A2-0 大力女...
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人知を超えた大力の女性は、『日本霊異記』の道場法師の孫娘と尾張国中島郡の役人の妻、『古今著聞集』の大井子と近江のお兼、『留守家旧記』の母、『譚海』12の姉、民話の おりか など数多くの人物が伝えられている。それらは、小説、民話、絵画、歌舞伎、講談などにも取り上げられて人口に膾炙した。
女性が持つ人並外れた力は、人助けなど善の能力と見られる大力がある一方、恐怖の対象ともなる怪力の悪として現出して、両面的な意味を持つ。
律令国家の時代には、「膂力婦女田」という大力の女性に管轄する田地を与えられていた記載もあり、また、江戸時代には大力の女性による女相撲が催され、見世物として色気に走るものもみられる。このように、大力の意味には、さまざまな要素があるようにも思われるが、大力の女性が特殊な位置にあったことが窺える。
そもそも、女性には神から授かった目に見えない力が備わっており、その力は女性を介してよその家や他者に伝わっていくのだと考えられている。その力にフィジカル的な大力を加えるべきなのか、また加えたとして、必ずしも女性を介するのでなく、血筋によって伝わるのではないかと考える場合もあり、説は定まっていない。
しかし、女性を介して他者に大力を伝えられるという民俗は、『古今著聞集』の大井子や紀州毛原の茗荷などの事例からも確認できる。
このパートでは、とくに、大井子とお兼を取り上げてみたい。両者は、鎌倉時代の説話集『古今著聞集』に登場した、近江の大力女である。(勝.)【補足説明】
・膂力婦女田
律令時代に諸国から貢献される膂力婦女(膂力婦・力婦ともいい、女丁・女仕丁と同義と思われる)の資養のために、出身の国で給された田。天平七年(七三五)五月二十三日設置。不輸租田。未授の間は輸地子田として国が経営。この田を原資とする養物は縫殿寮が受領して膂力婦女に支給した。
『国史大辞典』 JapanKnowledge, http://japanknowledge.com, (参照 2017-12-10)
・膂力婦女
女の仕丁。女丁(にょてい)。膂力のある者を選んだところからいう。膂力婦。力婦。
『日本国語大辞典』, JapanKnowledge, http://japanknowledge.com, (参照 2017-12-10)【参考文献】
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柳田国男『木綿以前の事』(創元社,1936)
宮田登『ヒメの民俗学』(青土社,1987)
宮田登『ケガレの民俗学 差別の文化的要因』(人文書院,1996)
西尾和美「説話の中の大力の女たち―説話の中のジェンダーを読む―」(『松山東雲女子大学人文学部紀要』第5巻, pp69‐81,1997)