0.1 中井文庫の概要

 本サイトは、所有する「中井文庫」の一部をデジタル・アーカイブスとして公開し、その解説を作成することを目的とする。デジタル・アーカイブスの手法等のついては、次項以下で述べることとし、ここでは中井文庫の概要について述べる。

 中井文庫(以下、当文庫とする)は、伯父将一(1902~1952)が収集したもので、歌舞伎関係・狂歌・浄瑠璃が多いが、ジャンルは細分すると 30以上になる。入手した順の目録が残っているので、その番号を原則とて管理番号としている。最初は、和算と天文である。伯父は、技術関係の仕事をしていたので、 和算に興味を持ったのかもしれないが、祖母の話では、祖父の兄である大伯父は、「そろばんの名人」であったということである。これら和算書は、大伯父の蔵書であった可能性がある。伯父が古典籍を収集するきっかけは、この大伯父の蔵書であったかもしれないが検証はできない。番号の若いところでは、和算の次は地誌が多いが、それらの蔵書の区別が付きにくいので、一連のものとして扱うことにする。

 第二次大戦当時、伯父は東京に住んでいた。東京に空襲が始まった後、またはその前に当文庫を田舎に住んでいた弟である私の父のもとに移したのである。伯父は、勤めていた会社から派遣されて、戦前、技術研修のために、約1年間アメリカに滞在していたという。このことから、アメリカと日本の国力の差を知っていたのではないだろうか。

 歌舞伎の番付等で、目録になく蔵書印がないものが多くある。同じものが2点以上あるものがあり、なかには4点も同じものがあるものがある。このようなことは、通常、蔵書家としては考えにくい。戦時中に、好きな歌舞伎で、比較的廉価なものを買いあさり、疎開させたのではないかと思われる。 

 当文庫で目録に管理番号あるものは、約1500点であり、約3,000冊である。1つの管理番号で複数の点数のものがあり、なかには狂歌の一紙ものは、一つの管理番号に100点が含まれている。また、管理番号の付けられていなかったものがあり、これらには新しく番号をつけたが、全部で約4000点、約6000冊である。歌舞伎関係が2000点あまりあり、半数以上である。歌舞伎関係等に、いくつか当文庫にしかないものがあるようである。