酒蔵を訪ねて 伏見(37-3)

「京都ニュース 酒蔵を訪ねて 伏見」
酒の歴史は、その民族の歴史である。淀川三十石船の乗船場、高瀬川運河と大和・西国両街道を結ぶ伏見の地は、その昔から、酒造りの地として知られている。立ち並ぶ酒蔵、川の面に映る柳の佇まいは、伏見ならではの風情である。伏見は、酒の品質を決める水と米に恵まれている。各地から集められたAクラスの米を精米機にかけ、100キロの米が70キロになる程度まで精米する。続いて米洗い機で洗い、桶に入れて水に浸ける。蔵人の朝の仕事にかかるのが、午前3時。蔵人たちは、毎年11月、主に福井方面からおよそ1000名が入洛。1つの蔵に10人から20人のグループで、仕事の終わる4月まで、暮れも正月もない。桶に浸けられた米を、藁で巻いた蒸し桶に移す作業で、1日の仕事が始まる。米の蒸し上がりが、およそ1時間後の午前4時頃。湧き上がる家(?)の中に、蔵人たちは手早くスコップで蒸し米を桶に入れ、筵を広げて冷やす。ここで、いよいよ仕込みにかかる。冷やされた蒸し米は、別に作られた、もと、麹、水と一緒に、桶に入れる。仕込みは、酒造りの中で一番重要な仕事である。このあと、のどかな歌に合わせて 歌詞不明 蔵人は竹の櫂を入れる。今は桶もタンクに代わり、蔵人たちも帽子・ジャンバーと、ぐっと昔と違った姿。この後、20日から30日間、およそ摂氏15度に保ち、発酵させる。出来上がった醪は麻の袋に入れ、これを「ふね」と呼ばれる酒絞り機に積み重ね、圧搾し、酒と粕とを分離する。これが仕込みの仕上げ作業である。ひんし(?)は、酒絞り機から滴り落ちると、高い香りが酒蔵いっぱいに広がる。絞り出したひんし(?)は、濾過機を通し、不純物を取り、熱を加え殺菌、調合ののち、大きなタンクに貯蔵される。このタンクから、最終工程である瓶詰め工場にポンプで送られる。瓶洗いと高温殺菌。酒も自動的に瓶に詰められる。熟練者が目を光らす検査が終わると、醸造元のレッテルが貼られ、市場へ送られる清酒が生まれる。伏見の蔵元から出る酒の種類は36種に及び、その生産高は全国最高。40億円以上に上っている。人々の何気なく飲む酒も、このように伝統ある醸造法により、多くの人々の労働と技術によって作られているのである。