E01荒事の扮装

「見立 市川団十郎」
English Commentary
絵師:国貞〈1〉 判型:大判/錦絵
出版:天保5年(1834)頃江戸
資料番号:arcUP1971 所蔵:立命館ARC.

【解説】
 荒事は、貞享2年(1685)に初代市川団十郎が『金平六条通』で坂田金平に扮して、豪快な演技をしたのが最初であろうと言われている。以来、代々の団十郎が工夫を重ねている。超人的な力を持つ主人公の武勇を誇張し、様式化して見せるため、扮装・動作・発声・台詞回し・小道具などすべてに、創意工夫が残されている。このコーナーでは、荒事の衣装や化粧といった扮装で、力強さや、役の性格を表現する工夫を取り上げる。また、衣装などに見られる役者紋についても取り上げていく。
 本図は、八代目市川団十郎が「暫」を演じるのに見立てて描いた役者絵である。その扮装は、大きな三升紋を白抜きに染めた柿の素襖に長袴、素襖の下には腹巻の鎧と籠手を着込む。鬘は「板鬢」という横に鬢が張出した大きな鬘で、侍烏帽子と白い力紙をつける。化粧は白塗りの顔に朱で「筋隈」を取る。素襖は袖が開いて大きく誇張され、2mを超える大太刀を持ち、その力強さを表現している。なお、八代目市川団十郎は、天保3年(1832)11月顔見世に、八代目襲名時に16歳にして暫を演じており、翌年同年にも続けている。
 鬘の板鬘は、九代目市川団十郎による現行の扮装では、「車鬢」となっている。(本.)