上の図は、惣稽古の図である。総稽古とは、俳優同士が台詞を読みあう「読合」、動きをつけながら行う「立稽古」、音の効果の工夫や段取りをつける「付立」に続く、最終段階の稽古である。明治中頃までは、この総稽古を最後の稽古とし、現在行われている舞台稽古は行っていなかった。
脇狂言については、『大江戸しばゐねんぢうぎゃうじ ワキ狂言』にて紹介した。
右下に、囃子方と書かれ、黒御簾内部が描かれている。三味線を弾いている人や、唄っているようにみえる人が描かれている。また、隅には楽太鼓や、本釣鐘が描かれ、黒御簾の中をうかがい知ることができる。奥の壁あたりの赤い四角には、「立役者 祝儀を出す」と書かれており、役者が囃子方に対して祝儀を渡していたことがわかる。

【参考文献】
『歌舞伎音楽入門』(音楽之友社)
『歌舞伎の下座音楽』(演劇出版社)
『音で観る歌舞伎 ー舞台裏からのぞいた伝統芸能ー』(新評論)
≪ 続きを隠す