『能楽百番』「葵上」
絵師:月岡耕漁 判型:大判錦絵
出版:大正13~15年(1924~1926)
所蔵:立命館ARC 所蔵番号:arcUP1408.
六条御息所は嫉妬の炎に燃え狂う鬼女を表す般若面(→F1-4)を被っていることから、御息所が強い意志を持って葵上をとり殺そうとしている様子が伺える。
しかし原作の『源氏物語』では、御息所は葵上に取り憑いている生霊が自分だという自覚はない。御息所は、生霊を退散させるために焚かれたというケシの実の香りが自らの体に染みついていることに気付き、ようやく生霊の正体が自分であることを悟るのである。物語の結末も能と『源氏物語』とでは異なっており、原作では生霊の前に成す術なく落命した葵上が、能では比叡山の僧の念力によって救われている。(三).