B3-2 鬼童丸
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作品名:「源頼光朝臣丹波国市原野にて四天王の勇士をもつて鬼童丸を退治するの図」「鬼童丸」
出版:不明
絵師:歌川国芳
判型:大判錦絵3枚続2枚目
所蔵:The British museum(BM-2008,3037.191072)伝承にまつわる妖怪の一人として、次は「鬼童丸」を紹介する。本図に描かれている男が、鬼童丸(または鬼同丸)である。左手に持っているのは牛の皮である。鬼童丸が、ある人物を襲うために牛の皮を被って隠れて、待ち伏せをしているというシーンを描いている絵である。そのある人物というのが、酒呑童子討伐で知られる武将・源頼光である。
鎌倉時代の説話集『古今著聞集』に登場する鬼というのが、最も有名なものである。その内容は、頼光が弟の頼信の家に行くところから始まる。頼信の家の厠に、鬼童丸が捉えられているのを頼光が発見する。頼光は、念のため鎖できつく縛っておくように頼信へ告げる。そのまま、頼光は頼信の家へ泊った。鬼童丸はきつく縛られていたにも関わらず、鎖をたやすく引きちぎり、頼光の寝床へと向かい隠れて様子を伺う。これに気づいた頼光は、従者を呼び出し、あえて大きな声で「明日、鞍馬に参詣に行く」と告げる。これを聞いた鬼童丸は、鞍馬に先回りし、市原野で放し飼いの牛を一頭殺して、その皮を被って体内に隠れて待ち伏せをしていた。しかし、頼光はこれをも見抜き、命令を受けた渡辺綱が弓矢で牛を射抜く。牛の中から姿を現した鬼童丸が、頼光に襲い掛かるも、動じることなくこれを斬り捨てたという。
鬼童丸は、酒呑童子に捕らわれていた女の子供であるとされており、父の仇として頼光の命を狙っていたのである。(小山)
参考文献
『鬼童丸』「名刀幻想辞典」