B2-5 獺

書名: 『画図百鬼夜行 前編 陰』巻一
作者:鳥山石燕
書型:半紙本3巻3冊
出版:安永05年(1776)
所蔵:The British Museum(BM-JH533)

獺は海、川に生息していたとされる妖怪である。魚が大好物で、夜釣りに行けば、いつの間にかびくの魚を食べられている。いかだの竿にぶら下げておいた魚が、帰って見るとなくなっている。獺が通ると川魚がみんな食べられてしまい、一匹もいなくなる。このような話が全国各地で語られている。
また、狐狸と同様に化ける妖怪の一種とされており、しばしば二十歳前後の娘や小童に化けるという。縞模様の着物を着て現れることが多く、その縞はどんな暗闇でも鮮明に見えることが特徴である。これを判別する方法は、「誰や」と問いかけるという方法がある。人間であれば「おらや」と答えるが、獺は「あらや」と答えるからである。大坊主に化けることもあるが、出会ったときに上を向くと背がどんどん伸びてしまうため、足元を見ると良い。そして、幻を見せて人間をだますことがあり、人家のないところに人家が現れる、逆に人家があるはずなのに見えなくなる、ごちそうだと思って食べたものが、馬の糞であったという説も残っている。
地域によっては、河童と同類とみなす場合もあり、川に遊びに行くと獺に尻子玉を抜かれると伝えられている地域もある。(榎並)

参考文献
小松和彦『日本怪異妖怪大事典』、東京堂出版、2013年

arrow_upward