A1 三ッ子の兄弟.
作品名:「松王丸 市川団十郎」「梅王丸 関三十郎」「桜丸 尾上菊五郎」
上演:文政6年(1823)5月 江戸・市村「菅原伝授手習鑑」
絵師:歌川国貞〈1〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUY0119~0121).

牛車のそばに描かれるのは松王丸を演じる七代目市川団十郎。真ん中に描かれるのは梅王丸を演じる二代目関三十郎、左側に描かれるのは桜丸を演じる三代目尾上菊五郎である。三人で牛車を引き合う場面が描かれている。梅王丸と桜丸がそれぞれに持っているのは、引き合った際に折れた牛車の轅である。顔には隈取という化粧が施され、松王丸が二本隈、梅王丸が一本隈、桜丸がむきみとなっている。この三人には赤色の隈取がされており、この色は荒事の基本である、勇気・正義・強さをもった役に使われる。二本隈は目じりとまゆ毛の端から上へ向かって筋を二本入れる隈取のことで、大人びた荒事の役に使われることが多い。一本隈は額の両脇から、目尻の横、頬にかけて紅で一本の筋が描かれる。一本隈は、二本隈と比べ、やんちゃな役に使われることが多い。むきみ隈は白く顔を塗り、目尻と目頭からまゆ毛まで紅を縦に入れるものである。この隈取は、若々しく正義感の強い役に多く使われている。このようにそれぞれの役柄に象徴する化粧法となっている。(濵田)
【参考】
題名:菅原伝授手習鑑
編著者:林京平
発行:1998年5月30日
発行所:株式会社 白水社 
サイト名:文化デジタルライブラリー『歌舞伎辞典』
最終閲覧:2019年12月29日
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