A0 菅原

 延享3年(1736)8大坂・竹本座で人形浄瑠璃として初演。五段構成の時代物で、本外題「菅原伝授手習鑑」。作者は、初代竹田出雲、竹田小出雲(二代目出雲)、三好松洛、並木千柳。大変な評判を得て、八か月間興行したと伝えられる。翌月、京都ですぐに歌舞伎化され、翌年には江戸でも、操芝居の肥前座で上演、これも大入を続けたと伝え、5月には歌舞伎の中村座で上演された。
 平安時代の菅原道真と藤原時平の対立から起きた、いわゆる「昌泰の変」を題材にして、周囲の人々の生き様が描かれている。二段目、三段目、四段目には、それぞれ親子の別れがテーマとなっており、それぞれ「道明寺」を松洛、「駕の祝」を小出雲、「寺子屋」を千柳が担当したと言われている。また、初演の前年7月に大阪天満で三つ子が誕生したという話題から、梅、松、桜の名をとった三つ子の兄弟を配している。
 初演後から頻繁に再演され、現代でもその人気は衰えていない。歌舞伎では、荒事の代表演目として「車引」、子どもを身代わりして首実検に及ぶ「寺子屋」の上演が圧倒的に多いが、全段通しで上演されることもある。
 本コーナーでは、大量に残る役者絵の内、絵柄としも最も迫力がある「車引」を取り上げてみたい。(濱a.)

【参考図】
作品名:「梅王丸 坂東三津五郎」「松王丸 松本幸四郎」「桜丸 坂東彦三郎」

上演:文政6年(1823)5月 江戸・中村 「菅原伝授手習鑑」
絵師:豊国〈1〉

判型:団扇絵錦絵
所蔵:立命館ARC(arcBK02-0132_14)