A2 車引の段.

作品名:「菅原伝授 車引」
絵師:歌川国貞〈1〉
上演: 天保12年(1841)11月 江戸・河原崎「菅原伝授手習鑑」
判型:大判錦絵(横絵)
所蔵:立命館ARC(arcUP3642).

中心の牛車の上で圧倒的な存在感を放つのは三代目嵐吉三郎演じる藤原時平公。その右手には四代目中村歌右衛門が演じる松王丸、左手には一代目市川海老蔵が演じる梅王丸、一代目沢村訥升が演じる桜丸が描かれる。松王丸、梅王丸、桜丸に対し、時平は悪役らしく藍色の隈取で描かれている。この隈取は時平の隈と呼ばれるものであり、顔を白く塗った上に、藍色で隈を取るものである。この藍色はスケールの大きな敵役に使用され、不気味で冷たい印象を醸し出している。
またこの時平のように高い位の敵役は「公家荒れ」と呼ばれる藍色を使った隈取で表現されることが多い。
時平は天皇を詐称する好色な若者でという役柄のため、天皇の金冠百衣姿を着ており、天皇の象徴である金巾子の冠を被っている。鬘は王子で真ん中から左右に分れた顎髭であることも時平の特徴である。
(濵田)

【参考】
題名:菅原伝授手習鑑
編著者:林京平
発行:1998年5月30日
発行所:株式会社 白水社 
サイト名:文化デジタルライブラリー『歌舞伎辞典』
最終閲覧:2019年12月29日
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