F4 だんまり.

作品名:「矢藤与茂七」「直助権兵衛」「民谷伊右衛門」
上演:嘉永元年(1848) 9月 江戸・市村「当三升四谷聞書
絵師:歌川豊国〈3〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP8232~8234).
だんまり(暗闘)とは、暗闇の中で探り合うようにして死闘ないしは物品を奪い合う歌舞伎独特の表現技法だ。このシーンを境に物語が大きく変わっていくため見せ場の一つといってもいいだろう。場面は第三幕「砂村隠亡の場」。伊右衛門が小平の霊を見て「またも死霊の立ち去れ」のセリフからだんまりが始まる。与茂七、権兵衛、伊右衛門(この他に茶屋女も登場するがここでは省かれている)が争っているうちに与茂七が持っていた廻文状と権兵衛の鰻掻きを取り違えてしまう。図を見ると、左に描かれた与茂七が鰻掻きを、中央に描かれた権兵衛が廻文状を持っていることからだんまりの事後かと推定される。このだんまりは以後世話だんまりの代表作として扱われることになる。当然のことながら、だんまりは暗闇の中で行われているため全体的に暗い印象をうけるものの、与茂七、権兵衛、伊右衛門の三人の世界を映し出しているように思える。また、だんまりの事後ということで三氏の緊張感がひしひしと伝わってくる。浮世絵から劇場にいるかのような臨場感を味わうことができるのだ。(澤野)

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