F7 大詰の火炎車.

作品名:「お岩のぼうこん 尾上菊五郎」「お岩妹お袖 岩井粂三郎」
上演:文政8年(1825)7月 江戸・中村 「東海道四谷怪談」
絵師:歌川国安
判型:大判錦絵 3枚続の内
所蔵:立命館ARC(arcUP4984).


大詰でのシーン。「わが黒髪も、もろ鬘、漾う水に浮かみもやらず、(中略)ともに奈落へつれて行かん」とお岩が吐き、伊右衛門が刀を抜こうとする。すると、それまであった糸車が火の車となり、大どんでん返しが繰り広げられる。図の中心部の火の車もさることながら注目したのはお岩の髪である。昔から「髪は女の命」といわれており、それが美の象徴でもあった。お岩自身、美しい女性として描かれている。それが漂う水にも浮かばないほど醜くなってしまった。それはお岩にとってショックなことであり、そこまで自分を追い込んだ伊右衛門への怒りも相まって、奈落へ突き落す。憎悪の化身と呼ぶべきお岩霊が忠実に再現されている。(澤野)