C7 捻じれた構図.

作品名:「大星由良之助」「寺岡平右衛門」「遊女おかる」
上演:万延元年(1860) 4月 江戸・中村「仮名手本忠臣蔵
絵師:歌川豊国〈3〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP 2593〜2595).

下手に釣灯籠、手水鉢があることや二重屋台に張り出す部分があること、そして何よりもお軽と平右衛門の場面に由良之助が描かれていることが不思議な絵。釣灯籠を使って由良之助が密書を読み、それをお軽が盗み見ると言う場面を成立させるためには、この釣灯籠の上のあたりにお軽がいた二階が存在することとなる。実際にこの演出で上演されたとは考えにくい。

描かれている場面は、平右衛門が由良之助の仲間となるためにお軽が斬られようとした瞬間、由良之助が止めるという場面と思われる。この場面であるとするならば、お軽が怖がっている様子なのは少し違和感がある。由良之助が止める直前は普通、平右衛門が仲間入りをするためにお軽が命を差し出すことを受け入れるのだが、その時に平右衛門の刀を取り上げて自分で斬ろうとするのである。このようにしゃがんだままの場面は平右衛門が理由も言わず斬りかかる場面があるが、そこに由良之助が出てくることは考えにくいためそれも違和感がある。

舞台を斜めから見ることで必然的に斜めの線が多く入る。よってこの描き方は奥行きを感じやすい。手前の由良之助が立っている空間にも広がりがあるため、二人の会話を隠れてこっそり聞いていたかのようにも思われる。この場面をこのような構図で描いた真意は判断できないが、作品の中に収まらない空間の広さがこの作品にはあるのではないだろうか。(堀)

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