C8 屋台へ上げられる九太夫.

作品名:「忠臣蔵 七段目」
出版:寛政(1789~1800)中期 江戸・和泉屋市兵衛
絵師:歌川豊国〈1〉
判型:中判錦絵
所蔵:立命館ARC(arcUP1629).

 お軽が死のうとするのを由良之助が止め、縁の下に隠れていた斧九太夫を引きずり出して、扇子で打ちながら蛸肴を食わせた恨みを言う場面。現在行われている演出では、斧九太夫を縁の下から引きずり出すのは寺岡平右衛門であり、二重屋台の上にあげられることもない。扇子で打ち据えるのも由良之助が縁の下に降りて行われる。
 実際にこの演出があったかは定かではないが、平右衛門が九太夫を引きずり出すという演出が定まっていなかった時期もあったのかもしれない。しかしながら由良之助が縁の下から二重屋台の上に引きずり上げるよりも、平右衛門がその役割を担い由良之助が降りる方が自然である。
 またこの後中居が出てきた時に由良之助は酔っているフリに戻るため、九太夫の身柄をすぐに平右衛門に渡す必要がある。その場合も九太夫はずっと平舞台にいた方が都合が良い。これらを併せて考えると、現在では上演されにくい演出ではないかと考えられる。(堀)

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