B7 狐忠信の宙乗り.

作品名:「きつね忠信」「思ひものしづか」「源のよしつね」
上演:嘉永01(1848)3月 江戸・市村「義経千本桜」
絵師:歌川豊国〈3〉
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP8229~8231)

 義経千本桜の四の切の場面では階段の仕掛けや早替といった舞台を用いた演出が多く存在する。写実的な演技・演出ではなく、奇抜さを持ったケレンな演技・演出をし、狐忠信の人間ではない様子を表そうとしている。
この絵に描かれているのはその一つの「宙乗り」である。近年ではワイヤーを用いるが、江戸時代では舞台天井に「下駄」と呼ばれる木製の台車から綱で吊るという危険の伴うやり方を用いた。狐忠信の上に見える青い線がそれにあたる。(堀)

狐忠信が身に着けているのは白狐の体に見立てた特殊な衣装で、白地に赤い火焔宝珠文様を散りばめた襦袢である。火焔宝珠文様とは、宝珠の上、左右から炎が燃えあがる様子を表した文様のことで、本来は吉祥文として使用されるが、狐火を連想させることから、狐忠信の衣装に使用されている。また毛縫いは白い布に白の絹糸をよじって刺繍したものであり、狐の毛並みを表している。(濵田)