研究プロジェクトの位置付け

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 本学は、京都にある特色を生かして新領域・新手法の開発に力を注いでいる。とりわけ芸術・文化研究においては全学的展開が計画されているが、研究教育基盤としてデジタル技術の活用が重要な課題である。デジタル技術の長足の進歩に応じて、文化・芸術分野でもデジタル資源の共有化が必須となっており、この分野の教育・研究を劇的に変える可能性が強い。アート・リサーチセンターが持つ、国際的ネットワーク、ならびにデジタル技術を効果的に活用することで、資源の世界規模の共有化を可能とし、本学の国際展開へと貢献する。本プロジェクトは、京都の地に、あらたな日本芸術文化デジタル資源キャピタル、集積拠点を形成するプロジェクトである。

プロジェクトの意義・目的

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 人間文化研究機構に所属する組織群の例を出すまでもなく、公的組織での人文系研究資源の蓄積や共有化は重要な課題であり、さまざまな努力がなされている。ところが芸術文化分野でのデジタル化には、高度なアーカイブ技術が必要とされる場合もあり、あまり進展がない。とくに文系理系の研究者が常に共同体制で行われないと実現しない1次資料の効率的な資源共有化については、現段階で実現して組織は見当らない。しかし、芸術文化分野での研究資源の共有は、難しいだけにこの分野の研究を飛躍的に進化させる可能性を持っている。

 本研究は、単に資料をデジタル化し、データベースを構築するのとは大きくコンセプトが異なる。これまでアートリサーチセンターにおける先行研究に伴って<人文系研究者の間に>蓄積されたデジタル技術とノウハウを使い、専門分野の特色を生かした<人文系研究者自らが構築する>機関統合型の資源共有化実践を行なう。対象は、いわば原物(一次資料)が中心となり、標準化された方法と基準に従ったデジタル複製物をアーカイブしていく。そして、実際の研究の現場で必須の研究データベースを開発・構築することを目的とする。文化芸術系、とりわけ文学・演劇・芸術系の資源の内、欧米を中心として世界中に散在した資源を対象とする。もちろん、国内の原資料も対象とし、世界中の本文やの研究者が日本国内、国外を問わず、研究資源の共有化を実現することによる、圧倒的な研究環境のイノベーションを実現する。

 その資料が研究対象となるべき「微妙さ」「複雑さ」などの表現は、記録することが難しく「原物」でしか研究できないと言われてきている。しかし、実際、研究者は、調査時にデジタルカメラを携行して簡易ながらも個人的なデジタル蓄積を行うことで、調査を進めている。この個人的なデジタル化は、その質を高めて、標準的な基準と方法を設定し、それを大勢の研究者が実践するようになれば、研究者自らが行うデジタル蓄積が、そのまま資源共有化を生む。本研究の特徴の一つはここにある。

 また、アート・リサーチセンターは、文理融合型研究所としてデジタルアーカイブ手法や公開研究を行ってきており、そのアーカイブ技術・公開手法にもノウハウが蓄積されている。研究者自らが現地調査を進めるのと同時に資料のデジタル化を効率よく行ない、デジタル資源化し、特殊な対象に対しても標準化が可能な技術開発を並行しつつ日常の研究活動の中で、資源蓄積がされる実践研究を行う。なお、このような全く新しいデジタル資源共有化拠点形成のためのプロジェクト研究活動を開始するが、アート・リサーチセンターの施設設備自体はすでに整備されている。

研究プロジェクト紹介