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1次資料デジタル化の効率化手法を応用した成長型ドキュメンテーション作成研究

研究代表者:文学部 教授 赤間 亮

①研究分野
 芸術・文化分野での資源共有化のための人文科学のなかの芸術・文化分野での資料研究、アーカイブ学、博物館学などの分野が関る。日本史、美術史、映像学などの専門性が要求される。また、芸術・文化分野の資料は、複雑・繊細である特徴があり、対象分野ごとに特殊な記録技術、アーカイブ技術が要求されることがある。これらは、情報工学とのコラボレーションにより実現される。

②研究内容
 アート・リサーチセンターで蓄積されてきた芸術・文化資料のデジタルアーカイブ技術やノウハウの内、本研究では、特に資料調査の現場において有用なノウハウを駆使し、文系研究者自らが資料のデジタル化を行うことにより、原物調査とデジタル化を同時に行う方法を使った大量アーカイブを実現する。研究者はこのデジタル複製物を利用して、カタロギングならびに、ドキュメンテーションを行なう。この場合、デジタル複製物は、アートリサーチセンターにおいて即座にサーバーに展開され、協力者を含めた研究グループに所属する内外の研究者間で共有されるため、狭い研究者間での占有による研究ではなく、世界規模の共有化によるドキュメンテーションが実施される点がユニークである。
 ドキュメンテーションには1次資料のデジタル複製物による共有化が必須の課題であったが、これまでの研究方法では、デジタル化自体は、業者に委託される方法をとっているため、<その分野の研究にとって>精度の高い複製物が作成されるとは限らず、また膨大な費用を要した。しかし、本研究の方法により、<対象に即したデジタル化>が行われることにより、デジタル複製物の資源価値が一気に増大する。また、通常予備調査と位置づけられる資料所蔵地での専門研究者による調査が実施され、時間が限定された条件でのカタロギングが行われるが、この調査がデジタル化にあてられるため、費用は劇的に少なくなり、かつ、データの共有化も即座に行われるため、即効性が高い。
 本研究では、デジタルアーカイブ研究、デジタル図書館などで対象となる図書、平面資料だけではなく、芸術系の資料が対象になるため、色の再現性や立体計測等においても効率的なアーカイブ手法が求められる、これらについては、すでに技術開発はできているが実用化・標準化の上では、未しの感が強いため、本研究に並行して研究の深化を図る。
 本研究は研究と同時に、デジタル資源が実際に蓄積されていくため、本学の教育・研究の高度化計画にとっての大きな力となると同時に、世界規模の日本芸術・文化研究への貢献度は大きい。

③期待される成果又はその公表計画
 本研究は、デジタル複製物自体を制作し、研究資源としてWeb上で共有することが研究スキームとなっているため、研究活動によって精算されるデジタル複製物、ドキュメンテーションがWeb上で即座に公開されることを基本スキームとしている。
 所蔵機関の許諾レベルによって、一般公開が難しい対象も出てくるが、研究利用を目的とした研究者間での共有化においては、問題は発生しないよう契約を結びながら研究を推進する。
 資料保存の目的や組織の構造的な問題により原物に接することが難しかった、芸術・文化分野において、原物を「言葉でなく」、イメージを伴って研究することが必須である。この基本的なジレンマを本研究方法では、解決することになるので、この分野における基盤的な研究拠点として本研究センターが実践的に役割を果たすことが最大の成果となるだろう。