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●絵本忠臣蔵(享和1・3京都北)

日本戯曲全集15巻解説

「嫁切り」「不破数右衛門」の通称で呼ばれる。

<鹿島明神の場>
 鹿島明神に参詣に来た岩城忠太兵衛とその娘おくめは、境内の茶店で犬上四古九郎、猿島綱六と出会う。二人はおくめに小山田小平次との縁談をすすめるが、おくめにその気はなく、また忠太兵衛も断固として聞き入れない。気が変わったら返事をせよと二人が去った後に、加藤与茂七が現れる。与茂七は境内にいた親とはぐれた幼少の姉弟の面倒をみる。与茂七が姉弟を湊まで送ろうとしたとき、酔っ払いの馬士と行き当たり一悶着となるが、馬士に謝り、騒動を無事に収める。その様子を見ていたおくめは与茂七に惚れ込む。
<福島加藤住居の場>
 与茂七は病床の父郷助と暮らしている。加藤家は代々明石の家来であったが、郷助は家を出て伯州の塩谷家に仕えるようになった。しかし大坂逗留中に病気となり、福島の地で養生をしている。与茂七は朋友の讒言により浪人となり、父の介抱のため福島の家で共に暮らすようになった。
 そこに祝言の酒樽が届く。実は与茂七は、家主の苫屋久兵衛から勧められていた縁談を受けることを決めていたのだ。しかし与茂七は酒樽の送り主に心当たりがない。訝しく思っているところへ久兵衛が訪れ今宵祝言をあげる旨を伝える。しばらくして嫁入りとなるが、やって来たのは忠太兵衛とおくめであった。与茂七はおくめと郷助との三人で簡単な祝言をあげ、盃を交わす。そこへ、小山田太平次をはじめとする若い衆が与茂七の家に上がり込んでくる。先程届いた酒樽は太平次が送りつけたものであった。祝儀に来たと上がり込む太平次達の相手をおくめに任せ、与茂七たちは奥で吸い物の用意をする。太平次は、師直征伐の連判をした廻文をおくめの懐へねじ込み、口説こうとするがおくめは応じない。怒った太平次は仲間たちとおくめを手込めにしてしまう。おくめは太平次たちの悪行を与茂七に訴えるが、懐中の廻文を見た与茂七はおくめの首を切り落とす。その首を手に太平次たちを皆殺しにした与茂七は、廻文を手に敵討ちへと出立しようとする。与茂七の思案を聞き、郷助は未練のないようにと自らの腹を切る。

<浅草紅梅院の場>
 浅草紅梅院の春月尼は、もともと伯州塩谷家判官の乳母であったが、判官成人の後出家をし先立たれた夫や子供の弔いをしていた。紅梅院に庭師として出入りする杢作―実は鷺坂伴内―のもとに塩谷家の重宝驪竜の笛が届く。伴内は判官の乳母である春月尼のもとに、浪人からの連絡があるのではないかと探っていたのである。笛を渡されたところへ声をかけられ、伴内はあわてて笛を杜若の生け垣の中に隠した。
 そこへ紅梅院にやって来たのが不破数右衛門であった。数右衛門は春月尼の甥であり、対面を願うが叶わない。春月尼は、数右衛門が酒色にふけり、追放された上、判官の切腹に対する不義不忠を責める。数右衛門は、追放の後生まれた子供の養育を頼みに来たのだが、本来の目的である敵討ちを明らかにすることは出来ず、主取りのためと嘘をつく。春月尼は、武士が二君に仕えるなど以ての外と取り合わない。敵討ちには足手まといと殺そうとするが、数右衛門の忠心を感じた春月尼に止められ、子を育てることを約束する。そこへ力弥や十内、顔世が現れともに山科へ向かうこととなる。その様子を窺っていた伴内たちは師直へ注進しようとするが、数右衛門によって斬り殺される。池の水面に集まった蛙を不審に思った数右衛門が池に手を入れると、そこには驪竜の笛が隠されていた。かくして一つの功をあげた数右衛門は晴れて連判状に血判し、春月尼から頂戴した長刀を手に敵討ちの門出を喜のであった。

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