No.32


No.32A  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535490)
安政5年(1858)3月
横25.2×縦38.6×厚1.3㎝

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No.32B  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535516)
安政5年(1858)3月
横24.1×縦31.8×厚1.6㎝

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No.32C  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535524)
安政5年(1858)3月
横27.6×縦39.2×厚1.1㎝

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No.32D  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535557)
安政5年(1858)3月
横24.3×縦30.7×厚0.9㎝

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No.32E  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535540)
安政5年(1858)3月
横24.9×縦33.0×厚1.5㎝

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No.32F  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535508)
安政5年(1858)3月
横25.2×縦38.6×厚1.3㎝

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No.32G  三代豊国画美人画(複製)
奈良大学図書館所蔵(2535532)
安政5年(1858)3月
横27.1×縦39.0×厚0.8㎝

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No.32H  三代豊国画美人画摺見本
奈良大学図書館所蔵(2535365)
安政5年(1858)3月 大判錦絵

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三代歌川豊国(1786~1864)が描いた「江戸名所百人美女」のうち、「しん宿」の1枚を利用した複製品。原画には版元印と年月印があるが、複製では削られている。摺見本の上部にある不自然な空白は、原画右上部の画題「江戸名所百人美女」および左上部の駒絵を削ったためである。
錦絵と呼ばれる多色摺の浮世絵を完成させるためには何枚もの版木が必要である。それらの版木には、墨線で作品の全要素の輪郭を摺るための墨版(主版)と着物や背景などの色を摺るための色版がある。色毎に版を作るため、作品に用いられる色が多ければ多いほど色版は増える。本作品では主版1枚、鬘板1枚、色版9枚を用いている。摺の順は、基本的に小さな面積から大きな面積へ、色の薄いものから濃いものへとなっている。
32Aは本図の主版(おもはん)である。主版とは人物や背景、落款などの輪郭線を彫ったもので、作品の基礎となる重要な版である。墨で摺られる版であるため、色版に対して墨版と呼ばれることもある。本図の主版をよく見ると、顔部分に入木されていることがわかる。この部分は周りの木材よりも堅いもので、顔や毛割など細かい彫を施すために行われた操作である。このような細部の彫には高い技術が要求されるため、任されるのは彫師の中でも特に優れた者であり、彼らは頭彫(かしらぼり)と呼ばれていた。
32Fは鬘板(かつらいた)と呼ばれる版で、髪の生え際など細かい輪郭線が彫り込まれている。鬘板を摺る時には艶墨(つやすみ)と呼ばれる光沢のある絵の具を用いて立体感を出し、髪の質感を表現した。また艶墨には入木の痕跡を隠す効果もあった。 32Gはぼかし用の色板。ぼかしとは摺技法の一種で、色の濃淡でグラデーションを作り絵に表情を与えるために用いられた。最もポピュラーなのは「吹きぼかし」と呼ばれる方法で、ぼかしを入れる部分を濡らした布巾で拭き、水気を含ませたところへ絵の具をはいて摺り上げる。本作品でもこの技法が用いられている。