No.18


No.18A  春葉集(しゅんようしゅう)
奈良大学博物館所蔵(T0938)
寛政10年(1798)  巻:秋、秋冬  丁付:七・八・九、一
横76.7×縦21.4×厚1.9cm(大本)

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No.18B  春葉集(しゅんようしゅう)
奈良大学博物館所蔵(T0926)
寛政10年(1798)  巻:(後)丁付:十五・十六・十七・(刊記)
横77.9×縦20.1×厚2cm(大本)

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版木を彫る前に、まず草稿を版下書きに渡し、版下を書かせる。多くの本屋には専属の版下書きがいたのである。だが、作者自らが自筆の版下を手がける場合もあった。展示品の『春葉集』は本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤とともに国学四大人と称せられる荷田春満(かだのあずままろ)の家集である。春満の死後、上田秋成らが遺詠を編集し刊行された。No.18Bの版木には「勧予梓此編 而秋成手校之」と彫られており、版下を認めたのは上田秋成自身だということがわかる。そもそも本書を『春葉集』と名付け、出版を勧めたのは秋成であり、『春葉集』刊行に対する彼の特別な思い入れが窺える。作者自作の版下が用いられるのは、本書のように特別な事情がある場合や、著名な文人が序跋文を書く時などにもみられる。