『船弁慶』から見るワキと間狂言の役割
2015年11月17日(火)、謡曲『船弁慶』を取り上げ、国際シンポジウムと講演会を行いました。
第一部は『船弁慶』をテーマに、室町時代後期の能に於けるワキと間狂言の役割の変遷についてシンガポール国立大学の林明珠准教授が発表し、続いて龍谷大学ジョナ・サルズ教授が「『響言』狂言役者が舞台で創り出す音響風景」と題してデモンストレーションを交え発表を行いました。
林 明珠 (シンガポール国立大学准教授)
ジョナ・サルズ (龍谷大学教授)
その後、立命館大学の研究員、ディエゴ・ペレッキア氏が、様々な日本の劇場のWEBページを考察し、国際芸術データベース(GloPAD)を元に教育や研究を生かす目標で作られたJPARC(英語の日本伝統芸能サイト)とを比較した講演を行いました。
ディエゴ・ペレッキア (立命館大学客員研究員)
立命館大学ARCの赤間亮教授は製作中の『船弁慶』二カ国語インタラクティブ・テキストを紹介し、それに対する課題や展望について討論しました。特に、「インタラクティブ」の定義には多くの関心が寄せられました。
休憩後、能楽師三名による「室町後期の能に於けるワキと間狂言『船弁慶』を中心に」の座談会と実演が行なわれました。ディエゴ・ペレッキア氏の司会で和泉流狂言方の泉愼也、高安流ワキ方の有松遼一と岡充はあまり聞く機会がないワキ方や狂言方の視点から見た考える能の上演について講演しました。『船弁慶』におけるワキとアイ狂言役の特殊な関係や、一曲の繋目になるアイの上演に焦点が当てられました。
座談会1〜左から右へ:司会 ディエゴ・ペレッキア、能楽師 有松遼一(高安流ワキ方)と泉愼也(和泉流狂言方)
最後に、その船に乗りながらのアイ狂言(船頭)とワキ(武蔵坊弁慶)の掛け合い、山降ろしが吹き出し、浪が荒くなり平の亡霊が浪の上に襲いかかって来る『船弁慶』のアイを実演しました。
舞台は海になり、船をこぐアイと乗っているワキとワキツレ。本番の上演は装束をつけ、子方も船の作り物に乗る。
船をこぐアイ
ワキツレの発言を注意するワキ。
実演の後、質疑応答やディスカッションの時間を設けました。