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イギリス系アメリカ民謡(1)

イギリス系アメリカ民謡(2)

イギリス系アメリカ民謡(3)

アフリカ系アメリカ民謡(1)

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ハワイ日系人の民謡

アフリカ系アメリカ民謡(2)
黒人労働歌 African-American work song

アメリカの黒人労働歌の起源は奴隷制時代にさかのぼる。どのようにして歌が生まれてきたのか定かではないが、労働に合わせて歌を歌うという習慣は、おそらく彼らの故郷であるアフリカからもたらされたものだろう。
アフリカの音楽は、一般的に社会的機能をともなっている。葬式のための音楽、祖先の霊魂とコミュニケーションをとるための音楽、狩猟の成功を祈るための音楽などだ。社会生活の重要な一部として音楽活動は行われ、純粋に鑑賞のための音楽というのは、伝統的にはなかった。そんな中で、労働歌も彼らの生活の一部として、重要な役割を果してきた。
実際、奴隷制時代にどのような歌が歌われていたかは知ることができない。しかし、1960年代までに録音された、刑務所で労働に服している黒人達が歌った労働歌(Prison work songs)には、その痕跡が残されていると考えられる。
労働歌の主な機能は、労働に規則的なリズムを与えて、一定のペースをつくること、また、歌うことによって、労働の辛さや退屈さを緩和することだ。奴隷の雇い主は、奴隷が歌を歌うことによって、より効率的に仕事をこなすことを知り、歌うことを奨励したという。
刑務所においても、労働歌は労働の効率を上げるのに役立った。例えば一本の大木を切り倒すのに、歌を歌いながらタイミングよく斧を振り下ろす黒人囚たちは、多いときは10人で一本の木にとりくむことができた。5人ずつで組になり、交互に斧を振り下ろしていくのだ。 歌が無ければタイミングを誤り、大怪我をしかねない(音楽1:"Stewball"  Southern Journey Vol. 3より;音楽2:"Rosie"  Deep River of Songsより)。これらの歌は、南部の黒人囚が、木を切り倒したり、木材を打ち砕いたり、雑草を刈り取ったりする時に歌っていた歌である(写真 サウスカロライナ州の黒人囚 (1934):原典 The John and Ruby Lomax 1939 Southern States Recording Trip )。グループで歌う黒人の労働歌では、この歌のように、リーダーとグループが「呼びかけと応答」(call and response)の形式をとるのが典型的だ。つまり、リーダーの呼びかけに対して、グループが応答をするのだ。
グループの応答は、リーダーの呼びかけの繰り返しだったり、一定の言葉の繰り返しだったり、呼びかけに対する答えだったりと、いろいろなケースがある。この応答部分では、複数の歌い手がそれぞれの歌い方で応答をするので、タイミングや音の高さにばらつきが見られ、それがかえって音楽的に深い味わいを与えている。
なお、これらの録音には、実際斧を振り下ろす音が入っている。パーカッション楽器のように聞こえるが、これは労働が生み出す音であり、音楽的意図をもったものではない。むしろ、この労働のリズムに合わせて歌が歌われているのだ。
20世紀初頭、黒人の鉄道工夫たちが歌った鉄道の歌も、同じような構造をもつ労働歌だった。ハンマーを振り下ろす動作に伴う歌として、これらの歌はハンマーソングとも呼ばれている。歌詞は、ハンマーを振り下ろす労働に関するものもあるが、労働と全く関係ない歌詞を持つものも少なくない。 気を紛らわすには、何か別の内容を歌ったほうがよいのだろう。その中で特に多いのは、女性、恋愛、セックスなどだ。

フィールド・ハラー field holler

黒人労働歌には、一人で歌うものもある。フィールド・ハラーといわれる。これは、一人で労働に従事している時、あるいは木綿摘みなど集団の中でも共同作業でなく個人的に作業している時に即興的に歌われたものだ。また、労働から離れて、気晴らしに歌われることもあった。 フィールド・ハラーに関しても黒人囚の録音が残っている(音楽3:"Louisiana" Southern Journey Vol. 3より;音楽4:"Levee Camp Holler"  Prison Songs Vol. 1より)。
“Levee Camp Holler” は、南部一帯のラバ追いをする黒人労働者の間に広く普及していたもので、一人で即興で歌うことから個人個人のヴァリエーションが豊富だ。
タイミングが重要である集団の労働歌と違い、フィールド・ハラーは自由な、語りのリズムで、訴えかけるように、たたみかけるように歌われる。憂いを含んだその曲調は、ブルースの重要な起源と考えられている。


No.

曲名

 出典

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試聴
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音楽1

"Stewball" T-4

アルバムSouthern Journey Vol. 3 (track 4)より
(from Amazon.com)

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音楽2

"Rosie" T-15

アルバム Deep River of Song: Mississippi Saints & Sinners (track 15)より

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音楽3

"Louisiana" T-1

アルバム Southern Journey Vol. 3(track1)より
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音楽4

"Levee Camp Holler
- Bama" T-11

Prison Songs (Historical Recordings From Parchman Farm 1947-48), Vol. 1: Murderous Home
(track11)より (from Amazon.com)

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