卯の花車
うのはなぐるま
画題
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解説
東洋画題綜覧
清少納言が『枕草子』の一節で、五月雨の降りみ降らずみのある日、杜鵑の声を尋ね聞かうと四人ばかりで賀茂の奥へ行く、田舎家の馬の絵書いた障子や、網代屏風、三稜草簾などに興がつて、杜鵑の声もうはの空に聞いてしまう、その道々卯の花の咲いたのを折りながら、車の簾に挟むといふ情趣深き場面で、冷泉為恭及円山応挙(松平子爵家蔵)近く磯田長秋(聖徳太子奉賛展)にこれを図したものがある。本文の一節を引く。
卯の花のいみじく咲きたるを折りつゝ、車の簾傍などに、長き枝を葺き指したれば、たゞ卯花重を、こゝに懸けたるやうにぞ見えける、供なる男どもいみじう笑ひつゝ、網代をさへつきうがちつゝ、こゝまだし、まだしとさし集むなり、人も逢はなんと思ふに、更に怪しき法師、あやしのいふかひなき者のみ、たまさかに見ゆるもくちをし。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)