杜鵑

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とけん


画題

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解説

東洋画題綜覧

『ほとゝぎす』の漢名、ほととぎす「杜鵑」の項を見よ。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)


杜鵑目杜鵑科に属する鳥、大さは位で背面は灰黒色を呈し翼羽は黒褐色、その内弁に少しの白い斑があり、腹は白色の地に多数の黒色の横斑がある、尾羽は黒く、数条の白色の横斑があり、眼の周囲は黄色、脚も黄色で指は二本前に二本後に向ふ、我国には四月頃渡来し十月頃南へ去る、その啼き声テツペンカケタカと聞ゆ、古来血を吐くといひ、種々の伝説がある、これがため詩歌等に詠賦せらるゝもの数を知らず、此の鳥にはまた変つた習性があり、自ら巣を営むことなく、他鳥の巣に産卵し、孵化せしむ多く鴬の巣に産卵する。

異名極めて多い、子規、蜀魂、不如帰、時鳥、蜀天子、杜宇、子雋、子鵑、杜魂、杜魄、蜀鳥、霍公鳥、沓手鳥、催帰、陽雀、勧農鳥、田鵑、望帝、思帰鳥、寃禽、謝豹、鴛鳥など。

日本の歌人も異名や雅名を盛につけてゐる。

時の鳥、時つ鳥、三月過鳥、綱鳥、田長鳥、田歌鳥、田中鳥、四手田長、橘鳥、童子鳥、冥途鳥、射干玉〈ぬばたま〉鳥、賎鳥、早苗鳥、黄昏鳥、夕影鳥、さざめ鳥、魂つくも鳥、卯月鳥、菖蒲鳥、常言葉鳥。

ホトトギスの称呼は、その啼く声から来てゐるといひ、杜鵑も亦啼声からの称呼である、それから、血を吐くといひ、血に啼くといふのは、望帝の故事からで、『蜀王本紀』に曰く

為蜀望帝淫其臣鱉霊妻、乃禅位亡去、時此鳥鳴、故蜀人見杜鵑鳴、而悲望帝、其鳴如曰不如帰。

沓手鳥の名に就いては『灌頂口伝』に

此の鳥先生〈さきのよ〉に沓を作りて売りけるを、百舌鳥、沓を買つて価を乞はるゝ故に、百舌は此の鳥の来る時は、木の下、竹の下に隠れて見えぬなり。

杜鵑血を吐くといふことの出所は『異苑』に

入有り山を行く、杜鵑の一群を見、聊か之を学ぶ、血を嘔いて便ち死す、人言ふ、此鳥啼くや血出づるに至つて乃ち上む、故に血を嘔くの事あり。  (南方随筆)

絵画に現はれた杜鵑は文学のそれに比して平凡で、卯の花月夜に杜鵑を飛ばせたり、雲井に飛ぶ姿を画くか、の花に配したりしてゐる、あまり大したものゝない中に、唯一点、伝藤原信実筆『杜鵑図』が東京帝室博物館にある、京都岐阜屋伝来である、写生も真に迫る、此の外、初夏の風物として描いたものには、応挙、呉春、芦雪、光起、崋山、抱一、その他にもあり、現代では郷倉千靱に写実的な作がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)